Velocette Viper
いよいよ本腰を入れてレストアへ突入しましょうと各パーツを見直す事にしました。
再使用するものと交換を要するパーツをチェックです。
フレームの歪みの測定では不具合は無し。
順調に見直しが進む中、ガ〜ン!!

見つけてしまいました、見なかったことにしよう?、・・・さすがにそれは出来ません!!

ピストンに欠けを発見です。
バラした当初は気が付きませんでした。
カーボンとオイルにまみれていましたから目処が付いたところで綺麗にしようとそのままでしたから。

エンジンを掛けた時には特に異音も有りませんでしたから安心をしていましたがやられてしまいました。
スリーブにも特にキズは見当たらず、破片も発見できませんでした。
欠けた部分が茶色く変色していましたから欠けを承知で組んだ物と思われます。
Topリングが2段目に組んである、おいおい!。
大胆です、英国人はジェントルマンではないのですか・・・・・・・・・・・・・。

別体型のミッションケースにもクラックを発見。
こちらは一次チェーンの調整等で強引にミッションを移動し若干斜めのまま走行した影響でしょう。
まあ、アルミの溶接で何とでもなりますから大して気になりません。

ピストンが問題、STD(スタンダード)かOS(オーバーサイズ)かカーボンを落としても刻印がありません。

英国へ発注するサイズは・・・・・・・・・・・・・・・・・、まあ何とかしましょう。
ピストン、ミッション問題発生!
ひとまず、問題はクリアです。

また一歩前進です。
ピストン

多分、ピストンの材質はローエックス(アルミ合金鋳物)でしょう。
当時は高温強度の高いローエックス合金が主に使用されていましたから。
最近は熱膨張係数の小さいハイシリコンアルミ合金もかなり使用されています。

僅かにバイトが当たったピストン本体の切削屑を見るとかなり綺麗な物でした。
これから判断するとローエックス合金でしょう、ハイシリコンアルミ合金の切子はもっとむしられた様なものになるはずです。

ピストン頭頂部は加工していません、ピストンリングの部分だけです。
セカンドリングとオイルリングの部分の間だけです。

上下に動かされるピストンリングを保持するのが一番の目的の部分ですからこの部分が真円に加工されても不都合が起きる部分ではありません。

熱膨張を考えても使用した補材と本体ローエックスの膨張係数に殆ど差がありません。
強度的には、補材の方が破断係数は低いです。
補った表面積は少ないですし、円周の1/6ほどですから大丈夫でしょう。
実質的には、ピストンリングが支えますのでこの補修部分のスリーブへの直接の接触はありません。
あれば、カジリになってしまいますから。

ピストンの温度差は高温に絶えずさらされる頭頂部とスカート部では100〜150℃の温度差が有るものと思われます。
ピストン頭頂部は上へと膨張するとともに外径部に膨張します。
この外径への熱膨張が無視できません、特に旧車はその材質によりクリアランスは大きく見積もられています。
ピストンは冷却時、横から見ますとテーパー円錐?台形になっています、エンジンの稼動中の熱膨張により円筒状になるような加工です。
ピストン上部のほうがスカート部より僅かに径が小さく加工されています。
また、上から見ると僅かな楕円になっています、真円ではありません。(HondaのNRのような楕円ピストンには見えません)
ピストンピン側の外径が僅か0.2mmほど小さくなっています。
多分、コンロッドの円運動の応力への対応と思われます。

ピストン径はピストンピンと90度ずらした位置を測定するのが一般的です。
ピストン


さあて、どうする!のピストンです。

欠けた部分にも多少の変色、汚れがあります。

私がエンジンを掛けたときの汚れとも思えませんから、前には走ったのかも?!

ボアを計ると、ワークショップマニアルより大きいですが、刻印がありませんのでSTDと判断して手配する事に致しました。

簡単に解決と言う事で・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

英国車は旧くても取り合えずパーツの供給に関しては安心です。

英国車の部品の供給が良いのは、英国に限らず、伊、独他の有志達のおかげなんです。

いろんな方がそれぞれに力を出し合って、今の「英国車は部品に困らない」という神
話を作り出しています。

沢山の方々の協力があって、50年も前のバイクに今乗っていられるのですから感謝しなければいけません。
手配も済んだ事だし安心して?、いや思い切ってアルミの溶接をして見ましょう。

駄目もと!ですから、TIG溶接で肉盛です。

材質が判断できません。

補助材のアルミ棒を検討して5000番台でいく事にしました。

これなら、鋳造でもダイキャストでも取り合えず大丈夫そうですから。

巣を直していたら、チョット盛りすぎ!
スカート部が直線ではありませんので芯出しも一苦労、表面にキズが付いてはいけませんので、ピストンの内側をチャックします。

ダイヤルゲージで慎重にいきました。

ピストンは真円ではありませんので、中心を狙って調整です。

1/100mmでは大雑把ですので、ダイヤルゲージは1/1000mmを使用しました。

まあ、旋盤の精度がそこでありませんので自己満足です!

後で考えましたら、4ツ爪のチャックがありました。

普段使いませんので、忘れていました、残念!
取り合えず、ピストンの直径まで加工致しました。

ピストンが真円ではありませんので、他の部分も多少切削されてしまいました。

こんなんで本当に良いのでしょうか!

圧縮を上げるために、上面にアルミの溶接で盛ることもありますので良いこととしましょう。

直接、爆発圧を受ける部分ではありませんのでいいでしょう?

欠けていたことを考えれば十分です?
グラインダで溝加工用のバイトを作りました。

加工後のピストンリング用の溝です。

大成功!、自画自賛です。

問題なく使用できそうです。

あとは、エンジンを掛けてみないと何ともいえません。


                                     
ミッション
ミッションケースです。

この程度のクラックならとアルミで溶接、肉盛りしたところです。

穴の内部までクラックが及んでいましたので大胆にいきました。

アルゴンでのTIG溶接です。                                                  
ミッション別体ですから1次チェーンの調整のため移動させる部分です。

ミッションプレートのスライド面だけ加工、面出しすれば良いでしょう。

フライスを使うまでも無さそう。

一部ボルト穴も埋めていますので、ドリルを通します。
ピストン入手へ続く