メッキの話
レストアするときに気になるところ、メッキ部分と塗装された部分でしょう。
もちろんエンジン関係、電気関係も気になりますが、今回はメッキをかじってみます。

旧いバイクはクロームメッキが多用されています。
このメッキパーツの多用が逆に旧車のシンボル見たいなろころもありますが・・・・・・・・・・・

ガソリンタンク、前後フェンダー辺りでしょうか、もちろんホイールリムもクロームメッキです。
このホイールが錆だらけだと心配になります、もちろん見栄えも気になるところです。
メッキの浮いた錆だらけのホイールをきれいなクロームメッキのホイールにするだけで見違えるようになります。
前後のフェンダーも綺麗だと他の部分がどうであれ凄く立派?、とても良いバイクに見えます。
そのくらいインパクトの強いものです。

このメッキは何の為にあるのでしょう、もちろん美観に貢献していることは間違いありませんが・・・・・・・・・・・・・・・・・
一番はなんといっても、金属の保護の為と考えるのが妥当なところでしょう。

旧いバイクに使われているのは鉄がほとんどです。
この鉄は自然界には存在しません(アルミニュームもですが)。
自然界にあるのは酸化鉄です、なぜでしょう、どんな物質も安定をもとめるからです、人間にもありますが。
当然、鉄も安定した状態を求めます、その安定した状態が酸素と結びつく事、即ち酸化することです。
ほっておけば安定を求めてドンドン酸化していきます、そう錆ていきます。
この酸化を食い止めるのがメッキです、このさい装飾メッキは置いておきます。

レストア馬鹿は機能が優先、美の追求はしません、結果で生まれた機能美、造形美は大好きです。

メッキ、渡金ともいわれますが金属の上に金属を乗せているのですから乗った金属(メッキ)は錆びないの?となりますが。

メッキの方式は結構の種類があります。
馴染みのある?電気メッキは、其のまま電気を利用して金属の上に他の金属の皮膜作っています。
電気を使わないのは化学メッキ、無電解メッキと呼ばれています、化学変化を利用して皮膜を作っています。
無電解ニッケル、P-inニッケル、 B-inニッケルあたりです。
プラスチックによく使われているのは蒸着メッキでしょう、金属を蒸発させて皮膜を作っています。
送電線の鉄塔によく使われているのは通称ドブ漬けなどと呼ばれている、溶融メッキでしょう。
地金属を溶融金属中に浸して皮膜を作っています。
拡散浸透メッキ、放電によって金属皮膜を作る陰性スパッタリングもメッキでしょう。
メタリコンとか金属溶射と呼ばれる溶融金属の粉霧を吹き付けて皮膜を作るなんてのもあります。

この金属溶射は給排気のタイミングを変えたりするときにカムの山盛りとかに使用します。
私もトライした事がありますが、といっても隣で見ていただけですが、金属溶射はともかく給排気のタイミングは難しかったです。
この金属溶射は別の使い方として、錆、虫食いのタンク、フェンダーでトライしようと企んでいます。

メッキの種類も色々あり過ぎて、それだけいろんな用途に使われているのでしょうが。
タンク、フェンダー等のクロームメッキは硬いです、摩耗ににも強いです。
メッキを厚くつけることが出来ますし、メッキされた表面をバフ研磨まですることが出来ます。

目的によっては銅メッキ、ニッケルメッキの下地処理をすることもあります。
ステンレス、真鍮、鋳物などの鉄材以外にもクロームメッキをすることが出来ますが、レストアではあまり用途がないので・・・・・・・・・・・・
ボルト、ナット類は亜鉛メッキです、実際には亜鉛めっき後にクロメート処理を行い耐食性を向上させています。
光沢クロメート通称ユニクロといわれているものです、青白い色をしています。
有色クロメートは通常クロメートといわれています、虹色のような感じです。
他には黒色クロメートもありますが滅多に見ません。

旧いバイクのボルト、ナット類はニッケルメッキの物がほとんどです。
このニッケルメッキはとても弱いです。
今はユニクロメッキがほとんどです、装飾部はクロームが多いですが。
私は、問題が無いところはステンレスがほとんどです、チタンはあまり使っていませんがアルミボルト、ナットよりは多用しています。
このチタンボルト、ナットはバイク部品として購入しますと、とても高いです。
ベアリング、オイルシール等もそうですが、これはチタンボルト、ナットも含めて消耗品ですから工業用として私は仕入れています。
仕事がらなのですが、1/10くらいの値段です、品質的にはもちろん問題はありませんというよりバイク部品より上のものが多いです。
以前はバイク特殊な形状、寸法のものも多かったのですが最近はコストの関係から規格品を使うことが多くなりました。


アルミニュームは錆びないと思われていますが、錆びます、鉄より早く。
切断等で活性化された表面は瞬時?に酸素と結合します、酸化皮膜をすぐに作り自分自身を守ります。
結果それ以上錆びないだけです。
アルマイトは何の為?、強度アップと美観でしょう、目的別に処理されますが。
通常は白アルマイト処理、銀色み見えるあれです。
メッキ厚が薄いです、40ミクロン、今は40μm(マイクロメーター)と言わなければいけません。
精度を要求されるときに仕様されます。
着色アルマイトもあります、黒、赤、青・・・・・・・・・これは封孔処理の時に行っています。
硬質アルマイトもあります、表面硬度を上げるための処理です、電気を通しません、絶縁されます。
テフロン処理は絶縁です、滑りがよく摩擦にも強いですからフェンダー辺りに使えば汚れが付かなくていいかもしれません。
アロジン処理もありますし、最近は光沢アルマイトもあります。

メッキは、古代エジプトまで遡ると言われています。
女王?のネックレスに金メッキがされていたとか、いないとか・・・・・・・・・・・・
日本の仏像にも金メッキが施されたから、わが国では794ウグイスのころでしょうか?。
メッキといえばメッキですが、怖いメッキ方法です、環境にも・・・・・・・・・・・・・・・・
金を水銀で溶かしてその水銀を蒸発させて金だけを残すという、いかにも体に悪そうです。

直流電流でのメッキも初期は銅、ニッケル、クロム、亜鉛、カドミュームなどでしょうか。
この中には怖いものがだいぶ含まれています。
カドミュームはあの公害のイタイイタイ病、水銀中毒は水俣病です。
クロムメッキ、この頃は六価クロムです、今でも多少はありますが、環境問題からほとんどが三価クロムに変更されてきています。

無電解メッキ(化学メッキ)は昔習った、カネカソーカ・・・・・・・・・の金属のイオン化傾向によるものです。
イオン置換の性質を利用した化学メッキです。
金属が酸やアルカリと反応し、溶解して溶液となったときにプラスまたはマイナスの電気を帯びたイオンになります
このイオンは液体のときの言い方で、固体の時には電子というのが普通です。
一般的にイオン化傾向の大きい金属ほど酸化(錆)しやすいです。

金属イオンを置換反応、あるいは酸化還元反応にを使った還元法は金属以外の不導体にもメッキが可能です。
プラスチック、ガラス、木材、ゴムなどのメッキです、ニッケル、銅メッキがほとんどですが。

最近はこのニッケルも敬遠されてきています、汗等で溶け出して肌に良くない、金属アレルギーとかのことです。

古くからあるといえば錫があります、アルミニュームと同じように表面に安定した薄い酸化膜を形成します。
このため耐食性良く光沢が続きます、そして無害です。
これに対して、鉛も古くから使われています、古代は容器の内側にこの鉛を用いていました。
ワインの容器にもよく利用され、結果鉛中毒で亡くなったようです。
ワインが悪魔の飲み物と言われたのは血の色のほかにこんなことがあったんです。
メッキの工程をみますと結構大変です。
そのほとんどの工程が脱脂、酸洗いそして、水洗でしょう、これを研磨(バレル、バフ等)、メッキ等の工程ごとに繰り返しています。
最後に中和工程もあります、まあこれはメッキの種類によって多少は違います。

こんな事を書いていても、実際には余り役には立ちませんが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

レストアで考えればどうやってこんなボロを再生しようかですから。
メッキも塗装も表面処理ですから、下地の表面をそのままトレースします、膜厚はせいぜい20μmから100μmくらい。
穴があれば、穴なりにキズがあればキズなりに・・・・・・・ですから。

ガソリンタンクの再生ならば塗装するのならパテで何とかなります、厚付けすれば問題が増えますが。
メッキを考えれば下地作りでしょう、まあ塗装にも言えるのですが。
この下地がいい加減だと、どうにもなりません、ここで手を抜いた物はあとでいくら手を掛けても無駄です。

実際にはメッキは塗装と違いアマチュアが手におえる物ではありません。
扱いに許可の入るものも多いですし、必要とする設備がかなりのもの、メッキはプロにお願いするのが一番です。

1から10までお願いするのはレストア馬鹿は許しません?・・・・・・・・・
出来るところは自分で楽しまないと詰まりません。

基本的にボルト、ナット類は新品に交換します、でも特殊な形状のもの、手に入らない物は再利用です。
あまり使いたくは有りませんが、仕方ありません。
基本的にネジは雄ネジ、雌ネジとの摩擦の利用ですから消耗品です。

特殊ネジも結構旋盤、フライスを駆使して作ってはいますが再利用するネジ類、パーツはとりあえず洗浄します。
バリが有ったり、キズ、変形のあるものはこの時に修正します、メッキが上がった後でがっかりしないように。
いつもこの後にサンドブラストをしています。
旧いニッケルメッキのものは簡単に剥がれてしまいます。
クロームのパーツはロウ付け等で修正します、ブラストは掛けません、あとのバフ掛けが大変になってしまいます。
クロームメッキ仕上げのものは汚れだけ落として、あとはメッキ屋さんにお任せです。

塗装するパーツもアンカー効果を狙って一緒にブラストをしています。
ユニクロメッキのものは、酸で洗ってメッキを剥がせます。
メッキを剥がさないとネジ類が太ってしまい後で苦労します。
Gasが発生しますので最近はメッキ屋さんにお任せしています、サビ取りも同時にお願いします。
ブラストをすると表面が活性化していますのですぐに錆びます。
さび取りをお願いするのにブラストでサビを落としているのは、そのパーツの状態を見極める為です。

私はスポークはステンレス派、そんな派があるかどうかわかりませんが。
スポークネジ切りもありますが出番が廻ってきません。
スポークのネジはサイズが特殊ですから、再利用の為のメッキは旧いメッキは必ず剥がさないと泣きを見ます。
メッキ厚はコントロールできますので、お願いするときに指定すれば大丈夫です。

ガソリンタンクをメッキするのなら凹みの場合は思い切ってタンクの切開も考えます。
このほうが結果的には早いですし、へこみの叩き出しを行い再度溶接します。
サビ、虫食いは溶射は於いておいて、ロウ付けです。
メッキの場合、バフ掛けの工程でかなりの熱が出ます。
ハンダ付けでも良さそうなのですがハンダの融点をバフでの摩擦熱が上回りハンダ付けした部分が溶け出してしまいます。
接合に使えばその部分が外れます。
ロウ付けは銀ロウを使っています、コツさえ掴めば結構簡単です。
ホームセンターのプロパンの物でも1400℃くらいにあげられますから。
銅のロウ付けのほうが温度を必要としますので、チョッと個人では難しいです、酸素が使えるのでしたらいいでしょう。
アルミのロウ付けもありますが、こちらは温度的には低くていいのですが、見極めが難しく、チョッと油断するとアルミが溶けてしまいます。

このロウ付け、かなりの強度があります。
旧いバイクのフレームはロウ付けが多用されています、自転車は今もロー付けが多いです。
見た目も綺麗ですから、パイプには最適のように思われます。
あの仏、英間のユーロトンネルを掘った削岩機。
カワサキだったような気もするがサンダーバード?号のようにモグラのごとく岩盤を掘り進んだ切削機?の爪もロウ付けです。

鉄板の溶接、やってみれば簡単?です、アーク溶接ですと厳しいですが。
半自動のワイヤータイプのMIGであれば結構思いどうりにいきます。
アルミも可能ですがTIG溶接のほうが適しています。
薄物は鉄板も含めてTIG溶接のほうが綺麗にいきます、ビートが命でしょうかアルミは特に。

クランクケース、ミッションケース等結構クラックが入ったものも多いですから、このアルミの溶接が出来れば楽勝?です。
汚れを落としたら、クラックが・・・・・・・よくあります。
肉盛もできますから、欠損部分の復元も私は結構やっています。
シリンダーブロック等のフィンの欠損は鋳鉄がほとんどですので、部品取りのサビだらけのものから切り出して溶接しています。
アルミの場合も同じようにしていますが、最終仕上げにブラスト処理してツナギ目を消しています。

耐熱黒塗装の手抜き?のものもあります、ほとんどだったりして・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ユニクロ、ニッケル、アルマイトメッキは探せば近くにあると思います。
私もローカルのメッキ屋さんにお願いしています。

ガソリンタンク、前後フェンダーやエキパイ、マフラー等々のクロームメッキは近くに良い所がありませんので、宮城の日本メッキ工業さんにお願いしています。
メッキの剥離からサビ取り、バフ掛け、メッキと丁寧に仕上げて頂けけますので安心です。

フロントフォークのクロームメッキの再生は福岡の東洋硬化さんにお願いしています。
サビ、虫食いは何のその、段付き磨耗したものでも、見事な再生です、純正より精度も良いです。

ニッケルメッキはアマチュア無線を楽しんでいた頃は真鍮、銅にメッキして遊んでいました。
金、銀メッキは今でもチョッとしたものにメッキしておりますが、他のメッキだけはアマチュアの手には負えません.

レストア馬鹿も、この楽しみはあきらめています。