ネジのお話
普段何気なく使っていますが整備の基本のネジ、どれも素晴らしいですね。
ネジが巻貝がヒントとの話は有名ですが、ネジを締めたり緩めたり基本ですから。
小さいサイズをビスと呼ぶこともあります、ぶどうのつるの様子からそう呼ばれるようになったとか。
ちなみにネジは日本語ですが、ネジルから来ていたと思います。

現在使用されているネジ、ナットの規格はメトリックとインチのものが有ります。
普段使っているもはまずメトリックと呼ばれるISO規格のメートルネジがほとんどでしょう。
メトリックでは首下長、ピッチ、二面幅を表示しています。
ボルトの頭に8、9と言った数字が書いてある物もあります、ハイテンションボルトです。
これはそのボルトがどのくらいまでトルクを掛けられるかの数値で最低保証値?を表しています。
8または8Tは80kg/mmです、何も書かれていないものは通常は4Tです。
引っ張り、伸びる強さとでも言いましょか、当然ナットにもあります。

ちなみによく使われる六角穴付きボルト(キャップスクリュー)は10T以上の強度があります。
私たち機械屋はこのキャップスクリューしか通常使いません。
基本的にボルト、ナット類は消耗品です。


インチの世界

工具の分数の世界、 7/16 と 5/8 どちらが大きいの 3/4 と 7/8では?
はじから、当てて見る始末。
うん・・・・

解決法がありました。
全て分母を共通にすること。
7/16と5/8では、7/16=3.5/8  5/8 の方が大きいですね。
3/4と7/8では、3/4=6/8 ですので 7/8 の方がわずかに大きいです。
分母8が基本です。

インチにも英国旧インチと米国インチがありまたまた大変。
英インチ、米インチにもISOネジと同じで細目があります。
通常、現在のインチは ユニファイでイギリス、カナダ、アメリカで統一(軍事目的)されています(ISOインチ)。
ユニファイは現在、UNC(並目)、UNF(細目)の規格です。

そして80年代まで、英国車のバイク、ミニ、ジャガー等車も含めて、旧英国インチが使われています。
旧英国インチにも、BSF規格(細目)とBSW(並目)規格のインチがあります。
BSW規格  (ブリティッシュ スタンダード ウイットウオース)通称ウイットネジ、例に漏れずウイットウオースさんの名前です。 
BSF規格のものがバイク、車は大半です。

厳密に言うと、ネジ山の角度も違います。
BSW(ウイット)、BSF規格は55度、ISO,DIN(ドイツ規格),ユニファイ、JIS、旧JISとも60度です。
自転車の規格は今でもBSCY規格で、60°です。
DIN規格は私たち電気屋も普段普通に使っておりますが。
お馴染みのところでは、カーコンポの規格は DIN(48mm) 2DINで表示されていますね。
ダッシュボード等のカーコンポ、ナビ等の取り付け部の四角い穴です、各社微妙に違いますが、コーナーRをとってあったりと。

ついでに言うと、ISOのP1.0、P1.25とかのピッチ(P)に相当するものは、1インチ(25.4mm)の中の山数で表されます。
TPIで表しています。
このピッチ、ロジック回路を作るときに使っている、ICとかよく付けている基板の穴ピッチは今でも 2.54mmです。

とっくにインチ規格は廃止になり、ISO規格で世界が統一される中まだ使われています。
商取引では、インチ表示は認められていません、全てISOのmm規格です。
日本でも尺、間等が使われていますのでなんともですが。

ちなみに、建築等で言われる 分(ぶ)ネジはインチ規格の呼び名です。
1/8=1分、1/4=2分、3/8=3分、7/16=3.5/8=3分5厘・・・と分母を8にしたときの分子の数が呼び名です。

バイクでも未だにホイール、リムサイズはインチですし、タイヤもインチとミリで表記されています。
バイアスタイヤは3.0 3.5、とか幅はインチです、リムは、1.85、2,5・・・です。
ホイールでは大きさはインチですが、オフセットはmmです。
タイヤ 196/60-15 幅195mm、扁平率60% 15インチ、表示が混在しています。

ハンドル径は今でも22.2mm 7/8インチですし、私たちがよく手にするラチェットレンチの差込も 1/4、3/8、1/2iインチですね。

TVも画面の大きさはインチですが、店頭では25型、32型と商取引を意識して表示されてはいます。
会話では、何インチ呼ばれていますが・・・・

ちなみにmmはフランスの規格が元になっています。

他にもネジとしては配管等に使われている、平行ネジ、テーパネジもあります。
機械には台形ねじを使ったボールネジと呼ばれていますが、これをよく使用しています。
このときはピッチと言わずに リードといいます、1回転で何mmという表現です、リード5は1回転で5mm移動します。

お馴染みのところでは角ネジ、のこ歯ネジと呼ばれるバイスやジャッキが思い浮かびます。
エジソンネジと呼ばれることもあるのが、電球とかに使われている口金部分のネジです。


英国車のレストアで最初に困ってしまったのがネジ類です。

ブラストしたり、サビ取り剤(レストアラー御用達のRS-R1000)できれいにした後メッキに出しました。
最初からメッキが掛かっていなかったものは然程ではなかったのですが、メッキが掛けてあったものはメッキ層が落としきれていずに太ってしまいました。
おかげでナット、ネジがきつくて回りません、トルクレンチの使いようがありません。
本当はメッキするボルト、ナット類はメッキ厚を考慮して50ミクロンほど小さくするのが普通です。

メッキを元まで剥離する自身がありませんでしたし、このネジ類を手に入ることはまず出来ないでしょう。
そこで考えたのが、このネジ、ナット類を再使用するためにタップとダイスを探すことにしました。

私、電機設計とともにメカ設計もしておりますので何とかなるのではと思っていましたが・・・・・・・
これがとんでもない!!
日本のメグロ等の旧ネジはステンレスネジも含めルートが有りますので大丈夫なんですが。

いつもの商社をくまなく当たっても何処からも回答が得られません。
英国まで探しに行ったら、と言われてしまいました。
英国でも日本の旧JISと同じで、”85頃この規格は廃止されています。

旧JISが廃止になったのが’68頃ですので、バイク等でこれ以前の年代のものは注意が必要です。
5mm以下のものはピッチが違います。
6mm以上のピッチは旧JISも同じですので大丈夫です。

以前、あるネジ屋さんに 7、9、11mmのネジ類をお願いしたときのこと。
そこの年配の社員さんに「私は、この道40年やっていますが、そんなネジは聞いたことも、見たこともありません」
「日本中さがしても、ありませんよ!」
「このババー!ネジの規格表、JIS規格をよく見ろよ、日本の規格だ、勉強しろ」と思いましたが、ぐっとこらえて「ありがとうございました」で・・・・・・

最近は見ませんが、HONDAでも80年代 7mmはトップブリッジに使われておりましたし、メグロ等でも9mmはエンジンマウント部に使われております。
7、9、11mmのタップ、ダイスは細目も含めて比較的簡単に手に入ります。


最後思い当たったのが、趣味の模型、カメラでした。

これには今でもBAネジが使われており、こちらのルートでと。

ビンゴ!!、当たりです。

在庫は無いが手配して頂けるとの事、ありがとうございます!!。

1週間後、届きました。BSF,BSW規格ともバイクに使われているサイズを数種類頼みました。
それなりの値段ですが、価値ある投資でした。

この工具を使う為の有効利用ではないのですが、、Nortonを買ってしまいました・・・・・・

ついでにボルトとスパナサイズの関係を少し。
基本的には分子の数が3増えます。
3/8のボルトでいけば、3/8=6/16 スパナサイズは(6+3)/16=9/16となります。
例外もあるようですが・・・・・・・・
ボルトの頭の6角形とナットは寸法的に同一なんです。
当たり前と言えば当たり前なんですが、日本のはスパナの12、13、14mm辺りが曖昧ですね。

WW規格のスパナは国内ではAIGOのみでの製造です。
ソケットはコーケンの物が手に入ります。
勿論、Snap onにもあります。
Snap onの良いところは、表記がWWでなくBS表記のところです。
ボルト径どおりの表記ですね。
1/4WWボルト、ナット用のスパナ、ソケットの表記は1/4BSです。
普通は3/16WWの表記ですから直感的に?、いやマンマですからかなり使いやすいと思います。

英国では頭が-タイプのものも多数です、日本にもありましたが。
スロッテド(−)タイプと呼ばれています。
BA規格のものに多いです。
ネジ山の角度まで違いますね、47.5度でしたか。
BA規格は現在でも光学関係に使われているものもあります。

やはりボルト強度に関する表記もあります。
メトリックのボルトの8、10、10T等に相当するものです。
ボルトの頭にR、Sとか刻印があります。
管理の悪い私はこれでBSF、BSWのボルトを判別しています。
ちなみにUNF、UNCはSが殆どですね。
Sの方がRより強度があります。
BSF、BSWはまずRですね、強度が弱いんです。
BSF、BSWでSはまだ見たことがありません、TF、RBSはたまに見かけますが。


ネジの作り方にも、ネジ転造、熱間鍛造、温間圧造、切削加工・・・・・・・・・色々な方法が取られています。
材質も現在は色々とあります。
チタンも一般的になってきました。
以前、国外に機械を輸出するときにココム違反と云う事で、樹脂ネジを全部ステンレスに入れ替えさせられました。
COCOMで世の中がピリピリしていた頃でした。
現在でも樹脂ネジの一部はココム違反ですが。


インチネジ規格
BSF 
規格
BSW 
規格
UNF 
規格
UNC 
規格
3/16 32 24
7/32 28 24
1/4 26 20 28 20
9/32 26
5/16 22 18 24 18
3/8 20 16 16
7/16 18 14 20 14
1/2 16 12 20 13
9/16 16 12 18 12
5/8 14 11 18 11
11/16 14 11
3/4 12 10 16 10
13/16 12 10
7/8 11 9 14 9
1 10 8 12 8
インチネジの表し方は、もちろんinch(インチ)です。

1インチ は25.4mmですね。

ネジの場合は1/8インチを基準にしています。

BSF規格、BSW規格は英国の旧規格です。

現在のインチネジはUNF規格、UNC規格となります。

メトリックでのピッチに相当するのが、1インチの中のネジ山の数となります。

単位はTPIで表します。

数字が大きいほうがピッチが細かくなります。

ダイス、タップにサイズと山数の刻印があります。


表は標準規格ですがW規格にもメトリックの細目のように同サイズでも数種類のネジ山が有ります。

5/16を例にとれば私が所有しているだけでも標準のTPI18、22の他に24、26、28、40が有ります。

ネジも奥が深いです、ピッチゲージは必需品です。
メートル並目ネジ規格
1種 2種 3種 ピッチ
M1 0.25
M1.1 0.25
M1.2 0.25
M1.4 0.3
M1.6 0.35
M1.8 0.35
M2 0.4
M2.2 0.45
M2.5 0.45
M3 0.5
M3.5 0.6
M4 0.7
M4.5 0.75
M5 0.8
M6 1
M7 1
M8 1.25
M9 1.25
M10 1.5
M11 1.5
M12 1.75
M14 2
M16 2
M18 2.5
M20 2.5
M22 2.5
M24 3
M27 3
M30 3.5
M33 3.5
M36 4
M39 4
M42 4.5
M45 4.5
M48 5
M52 5
M56 5.5
M60 5.5
M64 6
M68
一般的にネジと呼ばれる場合には、メートルネジの並目となります。

何も言わずに6mmのネジといえば、M6 ピッチ1mmのネジです。

加工図での記載はM6 これだけです。

メトリックのMです。

M6といえば世界中何処の国であろうと同じネジとなります。

ISOメトリックですので当たり前ですが。

通常使われているネジのサイズはメートル並目の1種ネジです。

2種、3種は特殊な用途、もしくは旧い産業機器での使用となります。

旧JIS規格のネジがあります。

5mm以下でピッチが異なっています。

細目ネジとはピッチが異なりますので、旧い車、バイクのレストア等では注意が必要です。

3種ネジはM9がメグロ等によく使用されています。

ホンダでもM7がトップブリッジに1980年代まで使用されていました。
メートル細目ネジ規格
ピッチ ピッチ
M1 .0.2 M25 1
M1.1 0.2 M25 1.5
M1.2 0.2 2
M1.4 0.2 M26 1.5
M1.6 0.2 M27 1
M1.8 0.2 1.5
M2 0.25 2
M2.2 0.25 M28 1
M2.5 0.35 1.5
M3 0.35 2
M4 0.5 M30 1
M4.5 0.5 1.5
M5 0.5 2
M5.5 0.5 3
M6 0.75 M32 1.5
M7 0.75 2
M8 0.75 M33 1.5
1 M33 2
M9 0.75 3
1 M35 1.5
M10 0.75 M36 1.5
1 M36 2
1.25 3
M11 0.75 M38 1.5
1 M39 1.5
M12 1 M39 2
1.25 3
1.5 M40 1.5
M14 1 M40 2
1.25 2.5
1.5 M42 1.5
M15 1 M42 2
1.5 3
M16 1 4
1.5 M45 1.5
M17 1 M45 2
1.5 3
M18 1 4
1.5 M48 15
2 M48 2
M20 1 3
1.5 4
2 M50 1.5
M22 1 M50 2
1.5 3
M22 2 M52 1.5
M24 1 M52 2
1.5 3
2 4
M55 1.5
M55 2
3
4
メートルネジにも細目ネジがあります。

限られた長さの中で、必要な締め付けトルクを得るのが一番の目的です。

ネジはネジ山どうしの摩擦力により締まっています。

接触する面積が多いほど摩擦力が高まりますから、同じ長さの中により多くのネジ山があるほうが有利となります。

6mmネジですと加工図面での表記は MS6 となります。

あまり一般的ではありません。

8mmですと細目ネジもピッチが2種類あります。

通常は M8-P0.75 と後ろにピッチを記入します。

径が増すとピッチの種類も増えてきます。